生成AIに質問したら、存在しない論文や架空の統計を、もっともらしい文章で示された――そんな経験をした人は少なくないだろう。生成AIが事実と異なる内容を、あたかも正しいかのように出力してしまう現象はハルシネーション(幻覚)と呼ばれる。

生成AIの性能は年々向上しているが、ハルシネーションが完全になくなったわけではない。業務で生成AIを使う場面が増えるほど、誤った情報が資料や顧客への回答に紛れ込むリスクも大きくなる。一方で、仕組みを理解し、使い方を工夫すれば、ハルシネーションによる被害は大きく減らせる。

本稿では、ハルシネーションとは何か、なぜ起きるのか、起きやすい場面、個人ですぐにできる対策、RAGや評価の仕組みを使った組織的な対策、見抜き方のチェックリストまでを、分かりやすく解説する。2026年10月時点の情報にもとづいている。

この記事の要点

  • ハルシネーションとは、生成AIが事実と異なる内容をもっともらしく出力する現象
  • 原因は、AIが「正しさ」ではなく「もっともらしい続きの文章」を生成する仕組みにある
  • 固有名詞、数字、日付、最新情報、専門的な内容で特に起きやすい
  • 個人では「根拠を示させる」「分からないと言わせる」「一次情報で確認する」が基本の対策
  • 組織では、RAGで社内資料に基づかせる、評価の仕組みを作る、人の確認を必須にするといった対策が有効
  • ハルシネーションはゼロにはできない前提で、確認の手順と責任の所在を決めておくことが大切

ハルシネーションとは?生成AIの「もっともらしい誤り」

ハルシネーションの2つの種類(事実と異なる出力・入力と食い違う出力)ハルシネーションの2つの種類(事実と異なる出力・入力と食い違う出力)

ハルシネーションとは、生成AIが事実に基づかない情報や、入力された内容と矛盾する情報を、自然な文章で出力してしまう現象である。英語の「hallucination(幻覚)」に由来し、AIがまるで幻を見ているかのように、存在しないものを語ることからこう呼ばれる。

やっかいなのは、誤った内容がいかにも正しそうな形で示される点だ。文法は自然で、説明の筋も通っていて、ときには具体的な数字や出典らしきものまで添えられている。そのため、内容に詳しくない人ほど誤りに気づきにくい。

ハルシネーションには、大きく2つの種類がある。

種類 内容 例
事実と異なる出力 世の中の事実と食い違う内容を出力する 存在しない論文や書籍を紹介する、実際とは違う発売日や数値を答える
入力と食い違う出力 渡した資料や指示と矛盾する内容を出力する 要約に元の文章にない内容が入る、資料と違う数字を書く

前者は一般的な知識を尋ねたとき、後者は資料の要約や翻訳など、手元の文章を処理させたときに起きやすい。業務での影響を考えると、後者は「資料を渡したから大丈夫」と油断しやすい点で特に注意が必要だ。どちらも、AIが「自信がない」ことを示さないまま出力する点が共通している。

ハルシネーションはAIの「嘘」なのか

ハルシネーションは「AIが嘘をつく」と表現されることもあるが、人間の嘘とは性質が異なる。AIには相手をだまそうとする意図はなく、正しいかどうかを判断しないまま、自然な文章を作った結果として誤りが生まれる。そのため、AIに「嘘をつかないで」と頼むだけでは防げない。誤りが生まれる仕組みを理解し、確認の手順や情報の与え方で対処することが大切だ。

また、ハルシネーションは単なる「知識不足」とも少し違う。知識がない場面だけでなく、正しい資料を渡していても、要約の過程で内容を取り違えたり、存在しない情報を付け足したりすることがある。どのような場面でも起こりうると考えておくのが安全である。

なぜハルシネーションは起きるのか:5つの原因

ハルシネーションが起きる5つの原因ハルシネーションが起きる5つの原因

ハルシネーションの原因を理解すると、どのような場面で注意すべきかが見えてくる。主な原因は次の5つだ。

1. 「もっともらしい続き」を生成する仕組み

大規模言語モデル(LLM)は、膨大な文章から言葉のつながり方を学び、入力に続く確率の高い言葉を順番に選んで文章を作っている。つまり、AIは「正しいかどうか」を確かめながら答えているのではなく、「いかにもありそうな文章」を組み立てている。そのため、知らないことを聞かれても、それらしい答えを作ってしまうことがある。

2. 学習データの不足や偏り

学習データに含まれていない情報や、ごくまれにしか登場しない情報については、AIは正確な知識を持っていない。マイナーな人物や地域の情報、専門性の高い分野などでは、似た情報を組み合わせて誤った内容を作り出しやすくなる。

3. 知識の時点が古い

多くのモデルは、ある時点までのデータで学習されている。それ以降の出来事や制度の変更は知らないため、最新情報を尋ねると古い情報や推測で答えてしまうことがある。検索機能を持つサービスでも、検索結果の読み取りを誤る場合がある。

4. 質問のあいまいさや誤った前提

質問があいまいだと、AIは意図を推測して答える。また、「〇〇が発表した新製品の特徴を教えて」のように、誤った前提を含む質問をすると、AIはその前提に合わせて存在しない内容を作ってしまうことがある。

5. 「答えなければならない」という傾向

AIは、利用者の役に立つ回答をするように調整されている。その結果、「分からない」と答えるよりも、何らかの答えを出そうとする傾向が生まれることがある。最近のモデルは不確かなときに断る能力が改善されているが、完全ではない。

ハルシネーションが起きやすい場面

ハルシネーションが起きやすい8つの場面ハルシネーションが起きやすい8つの場面

次のような場面では、特にハルシネーションに注意が必要だ。

  • 固有名詞:人名、企業名、製品名、地名、書籍や論文のタイトル
  • 数字:統計データ、金額、割合、件数、順位
  • 日付や時期:発売日、施行日、出来事の年
  • 最新の情報:最近のニュース、制度改正、新しいサービスの仕様
  • 専門的な内容:法律、医療、税務、技術仕様など、正確さが強く求められる分野
  • 出典や引用:URL、参考文献、発言の引用
  • 長い文章の要約:元の文章にない内容が混ざったり、数字が入れ替わったりする
  • 計算や論理の多い問題:途中で誤りが生じ、そのまま結論まで進んでしまう

反対に、文章の言い換え、アイデア出し、文体の調整など、「唯一の正解」がない作業では、ハルシネーションが問題になることは比較的少ない。生成AIの使い道を考えるときは、作業の性質に応じて確認の手間を変えるとよい。

分野別:ハルシネーションに特に注意したいポイント

同じハルシネーションでも、分野によって起きやすい誤りや影響の大きさは異なる。代表的な分野ごとの注意点をまとめる。

分野 起きやすい誤り 確認の方法
法律・税務 条文や制度の内容、施行日、改正前後の取り違え 省庁や公的機関の公式情報、専門家への相談
医療・健康 薬の用量、治療法、症状の説明の誤り 医療機関や公的機関の情報、医師・薬剤師への相談
プログラミング 存在しない関数やライブラリ、古いバージョンの書き方 公式ドキュメント、実際に動かしてのテスト
ニュース・時事 最近の出来事の誤認、古い情報の混在 報道機関や当事者の公式発表
学術・研究 存在しない論文や著者、誤った引用 論文データベースや原典での確認
社内の情報 社内規程や製品仕様の推測による回答 社内の正式な資料、担当部署への確認

特に、人の健康、お金、法的な権利に関わる内容は、誤りによる影響が大きい。生成AIの回答は参考情報にとどめ、最終的な判断は専門家や公式情報にもとづいて行うようにしたい。

一次情報を効率よく確認するコツ

すべての情報を確認するのは大変だが、次のような工夫で負担を減らせる。

  • 確認すべき箇所をAIに挙げさせる:「この文章の中で、事実確認が必要な箇所を一覧にして」と頼むと、チェックの漏れを防げる
  • 公式サイトを優先する:制度なら省庁、製品なら提供元、統計なら発表元など、情報の出どころを直接確認する
  • キーワードで検索して照合する:AIの回答に出てきた固有名詞や数字で検索し、複数の信頼できる情報源で一致するかを見る
  • よく使う情報源をまとめておく:業務でよく参照する公式サイトや資料の一覧を作っておくと、確認の時間を短縮できる

個人でできるハルシネーション対策:プロンプトの工夫

ハルシネーションを減らすプロンプトの工夫ハルシネーションを減らすプロンプトの工夫

まずは、生成AIを使う一人ひとりがすぐに実践できる対策から紹介する。指示の出し方を少し変えるだけで、ハルシネーションはかなり減らせる。

1. 「分からなければ分からないと答えて」と伝える

プロンプトに「確実でない情報は推測で補わず、分からない場合はそう答えてください」と一文加えるだけで、AIが無理に答えを作る傾向を抑えられる。資料を渡す場合は「資料に書かれていないことは『記載なし』と答えて」と指定するとよい。

2. 根拠や出典を示させる

回答と一緒に「その根拠となる資料の該当箇所」を示すよう求める。根拠を示せない部分は、ハルシネーションの可能性が高いと判断できる。ただし、AIが示した出典やURLそのものが架空の場合もあるため、出典は必ず自分で開いて確認する。

3. 資料を渡して、その範囲で答えさせる

AIの記憶に頼るのではなく、正しい資料を渡して「この資料の内容だけをもとに答えて」と指示する。これだけで、事実と異なる出力は大きく減る。資料と指示の境目は、記号やタグで区切って明確にしておく。

4. 質問を具体的にし、前提を確認する

あいまいな質問は避け、対象や条件を具体的に書く。前提に自信がない場合は、「〇〇という前提は正しいですか」と先に確認させるのも有効だ。

5. 段階的に考えさせ、自分で見直させる

計算や推論を含む質問では、途中の過程を示させると誤りに気づきやすい。さらに、回答の後に「この回答に誤りや不確かな点がないか見直してください」と頼むと、AI自身が問題点を指摘することもある。

指示の出し方の基本はプロンプトの書き方でも詳しく解説している。

ハルシネーションを減らすプロンプトのテンプレート

以下の資料をもとに、質問に答えてください。
・資料に書かれている内容だけを使ってください
・資料に記載がない場合は「資料に記載なし」と答えてください
・回答の根拠となる資料の箇所を、回答ごとに引用してください
・確実でない部分は、その旨を明記してください
<資料>【ここに資料を貼り付け】</資料>
質問:【質問内容】

出力を確認するときのチェックリスト

生成AIの出力を確認するチェックリストと用途別の確認レベル生成AIの出力を確認するチェックリストと用途別の確認レベル

どれだけ工夫しても、ハルシネーションを完全に防ぐことはできない。だからこそ、出力を受け取った後の確認が欠かせない。次の項目を習慣的にチェックしよう。

  • 固有名詞は実在するか:人名、企業名、製品名、書籍名などを検索して確かめる
  • 数字と日付は正しいか:統計や金額、日付は、公式の資料や一次情報で照合する
  • 出典は実在し、内容が一致しているか:リンク先を開き、本当にその内容が書かれているかを読む
  • 元の資料と食い違っていないか:要約や翻訳では、元の文章と重要な部分を見比べる
  • 情報は最新か:制度やサービスの仕様は、変更されていないかを公式情報で確認する
  • 話がうますぎないか:都合のよすぎる結論や、断定的すぎる表現には特に注意する

確認の際は、「AIの回答が正しいかどうか」ではなく、「この情報の出どころはどこか」を意識すると判断しやすい。確認にかける手間は、用途の重要度に応じて変えるのが現実的だ。社内の雑談的なアイデア出しなら軽い確認で十分だが、顧客への回答、公開する記事、契約や法律に関わる内容では、必ず一次情報で裏付けを取る必要がある。

用途別の確認レベルの目安

用途 確認のレベル
アイデア出し、文章の言い換え 軽い確認でよい
社内向けの資料の下書き 数字・固有名詞を中心に確認
社外に公開する記事や資料 すべての事実を一次情報で確認し、上長も確認
顧客への回答、契約・法律・医療に関わる内容 専門家の確認を必須にする

組織でのハルシネーション対策①:RAGで根拠に基づかせる

RAGで根拠に基づいて回答させる仕組みRAGで根拠に基づいて回答させる仕組み

業務システムに生成AIを組み込む場合は、仕組みとしてハルシネーションを減らす工夫が求められる。最も代表的なのがRAG(検索拡張生成)である。

RAGは、質問に関連する社内文書などを検索し、その内容をAIに渡したうえで回答させる仕組みだ。AIの記憶に頼らず、信頼できる資料を根拠に答えさせるため、事実と異なる出力を大きく減らせる。回答と一緒に参照した資料を表示すれば、利用者が根拠をすぐに確認できる。

ただし、RAGを導入すればハルシネーションがなくなるわけではない。次のような点に注意が必要だ。

  • 検索で正しい資料が見つからないと、AIは関係の薄い資料をもとに誤った回答をすることがある
  • 資料自体が古い・誤っていると、その誤りがそのまま回答に反映される
  • 資料にない内容を補ってしまうことがあるため、プロンプトで「資料にないことは答えない」と指示する

RAGの仕組みや精度を上げるコツはRAG(検索拡張生成)の解説記事で詳しく解説している。

組織でのハルシネーション対策②:評価と人の確認

評価と人の確認でハルシネーションを継続的に減らす評価と人の確認でハルシネーションを継続的に減らす

仕組みで減らしたうえで、どれくらいの頻度で誤りが起きているかを測り、改善し続けることが大切だ。

  • 評価用の質問と正解を用意する:実際によく聞かれる質問と、その正しい答えのセットを作り、定期的にAIに答えさせて正答率を測る
  • 回答の根拠との一致を確認する:回答の内容が、参照した資料に本当に書かれているかをチェックする。AIを使って自動で確認する方法もある
  • 利用者からのフィードバックを集める:誤った回答を報告できるボタンを用意し、問題のある回答を分析する
  • 人の確認を必須にする場面を決める:顧客への回答や重要な判断に関わる出力は、人が確認してから使う運用にする
  • AIに任せる範囲を絞る:誤りの影響が大きい作業は、AIの役割を下書きや候補の提示にとどめる

AIが自律的に作業を進めるAIエージェントでは、ハルシネーションが誤った操作につながるおそれもある。重要な操作の前に人の承認を挟む設計については、AIエージェントの作り方でも解説している。

開発者向け:AIアプリに組み込みたい技術的な対策

生成AIを使ったアプリやサービスを開発する場合は、次のような技術的な対策も検討したい。

  • 出力形式を構造化する:回答をあらかじめ決めた項目や形式で出力させると、不要な内容の付け足しを減らせる
  • 引用の検証を自動化する:回答に含まれる引用が、参照した資料に実際に存在するかをプログラムで照合する
  • 回答を控える条件を決める:検索で十分な資料が見つからない場合は、無理に答えず「該当する情報が見つかりません」と返す
  • ガードレールを設ける:特定の話題や、数値の断定などに制限をかけ、リスクの高い出力を防ぐ
  • ログを残して分析する:誤った回答のパターンを分析し、資料やプロンプトの改善につなげる

こうした仕組みづくりは、AIを業務に組み込むエンジニアの重要な仕事の一つでもある。AIエンジニアに求められるスキルについてはAIエンジニアになるにはの記事でもまとめている。

業務シーン別:ハルシネーション対策の実践例

ここまでの対策を、よくある業務シーンに当てはめてみよう。

シーン1:市場調査のレポートを作る

生成AIに業界の動向をまとめてもらう場合、統計や企業の動きなど、数字と固有名詞が多く登場する。AIには全体の構成案や論点の整理を任せ、数字は自分で公式の統計や企業の発表から集めるという分担が安全だ。AIの回答に数字が含まれる場合は、出典を示させたうえで、必ず元の資料を確認する。

シーン2:顧客からの問い合わせに回答する

問い合わせ対応では、誤った案内がそのまま顧客の不利益につながる。製品マニュアルや規約をRAGで参照させ、回答の根拠となる資料の箇所を担当者が確認してから送る運用にする。資料に記載のない質問には、AIに答えさせず担当者が対応する流れを決めておくと安心だ。

シーン3:会議の議事録を要約する

要約では、発言者や数字、期限の取り違えが起きやすい。「文字起こしに書かれていない内容は補わない」と指示したうえで、決定事項・金額・期限だけは元の発言と照合する習慣をつける。重要な会議では、要約を参加者に共有して確認してもらうとよい。

シーン4:プログラムを書いてもらう

コード生成では、存在しない関数や古い書き方が混ざることがある。生成されたコードは必ず実行してテストし、使われているライブラリが実在し信頼できるものかを確認する。エラーが出た場合は、エラーメッセージをそのまま伝えて原因を説明させると、修正の精度が上がる。

社内ルールで決めておきたいこと

ハルシネーション対策として社内ルールで決めておきたい5つのことハルシネーション対策として社内ルールで決めておきたい5つのこと

生成AIを業務で使う組織では、ハルシネーションを前提にした社内ルールを整えておきたい。次のような項目を、生成AIの利用ガイドラインに盛り込むとよい。

  • 出力は下書きとして扱う:AIの出力をそのまま正式な成果物にしないことを明記する
  • 確認の責任者を決める:AIの出力を使った成果物の責任は、利用者と組織にあることを明確にする
  • 確認が必須の情報を定める:数字、固有名詞、法律や制度に関する記述などは、一次情報での確認を必須にする
  • 社外に出す前の確認手順を定める:公開や提出の前に、上長などの確認を経る
  • 誤りを見つけたときの共有方法を決める:ハルシネーションの事例を社内で共有し、注意点を学び合う

ルールの全体像や作り方は、生成AIの社内ガイドラインの作り方で詳しく紹介している。

ハルシネーションが起きたときの対応手順

もしAIの誤った出力を使ってしまった場合は、次の順番で対応すると被害を最小限に抑えられる。

  1. 影響の範囲を確認する:誤った情報が、どの資料や回答に、誰に向けて使われたかを洗い出す
  2. 訂正と連絡を行う:社外に出てしまった場合は、速やかに訂正し、関係者に連絡する
  3. 原因を振り返る:どの確認が抜けていたのか、プロンプトや資料に問題はなかったかを確認する
  4. 再発防止策を共有する:事例として社内で共有し、確認の手順やルールを見直す

大切なのは、誤りを個人の責任だけで終わらせず、仕組みの改善につなげることだ。誤りを報告しやすい雰囲気をつくることも、組織全体のリスクを下げることにつながる。

ハルシネーションによる失敗事例と教訓

ハルシネーションの怖さは、実際に起きうる失敗の形で考えると分かりやすい。ここでは、業務で起こりがちな典型的なパターンを紹介する。

  • 架空の資料を引用してしまう:報告書や提案書に、AIが示した存在しない統計や論文を、そのまま出典として載せてしまう
  • 古い制度の情報で回答してしまう:改正前の制度の内容を、最新の情報として顧客に案内してしまう
  • 要約で数字が入れ替わる:会議の議事録の要約で、金額や期限が元の発言と違う内容になっている
  • 存在しない機能を案内してしまう:製品の問い合わせ対応で、実際にはない機能や料金プランを回答してしまう
  • コードに存在しない部品を使う:AIが提案した存在しないライブラリや関数を、そのまま使おうとしてしまう

いずれも共通しているのは、「AIが出したから正しいだろう」と確認を省いたことだ。特に、存在しないライブラリの名前を悪用して不正なプログラムを配布する攻撃も指摘されており、開発の現場では提案された部品の実在と信頼性を必ず確認する必要がある。議事録の要約精度を上げる工夫はAI議事録の選び方と使い方でも紹介している。

ハルシネーションはなくなるのか?今後の見通し

モデルの改良により、ハルシネーションは以前より減ってきている。検索と組み合わせて最新情報を参照する機能や、不確かなときに回答を控える仕組み、回答の根拠を示す機能なども広がっている。

しかし、生成AIが確率的に文章を作る仕組みである以上、ハルシネーションを完全にゼロにすることは難しいと考えられている。これからの生成AI活用では、「AIが間違えない」ことを期待するのではなく、間違えることを前提に、確認と改善の仕組みを組み込むことが重要になる。

AIを社内の資料やシステムにつなぐ技術も進化している。AIと外部ツールをつなぐ標準規格についてはMCP(Model Context Protocol)の解説記事が参考になる。信頼できる情報源とAIを適切につなぐことが、ハルシネーション対策の基盤になっていく。

ハルシネーション対策やAIの出力を検証する仕組みづくりは、AIを業務に導入する企業で求められている重要なスキルだ。AIの品質管理や導入プロジェクトに関わる仕事に挑戦したいエンジニアは、ITエンジニア専門の転職エージェントに相談してみるのも一つの方法だ。



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よくある質問

Q. 有料版の生成AIならハルシネーションは起きませんか?

A. 高性能なモデルほど誤りは減る傾向にありますが、完全にはなくなりません。有料・無料にかかわらず、重要な情報は必ず確認しましょう。

Q. 検索機能付きのAIなら正確ですか?

A. 最新の情報を参照できる点で有利ですが、検索結果の読み取りを誤ったり、信頼性の低いページを参照したりすることもあります。示された出典を開いて、内容を確認することが大切です。

Q. 温度などのパラメータを下げると、ハルシネーションは減りますか?

A. 出力のばらつきを抑える効果はありますが、知らないことを正しく答えられるようになるわけではありません。根拠となる資料を渡す、分からないと答えさせるといった対策と組み合わせることが重要です。

Q. AIに「本当ですか?」と聞き直せば正しくなりますか?

A. 見直しを促すことで誤りに気づく場合もありますが、逆に正しい答えを誤った内容に変えてしまうこともあります。最終的な確認は、AIではなく一次情報で行いましょう。

Q. 複数のAIに同じ質問をすると効果がありますか?

A. 答えが食い違う部分は、ハルシネーションの可能性が高いと判断する手がかりになります。ただし、複数のAIが同じ誤りをすることもあるため、一致したからといって正しいとは限りません。

Q. ハルシネーションで損害が出た場合、責任は誰にありますか?

A. 一般に、AIの出力を使って作った成果物の責任は、それを利用した人や組織が負うと考えられています。利用規約の内容や個別の状況によって異なるため、重要な業務では専門家に相談しつつ、確認の手順を整えておくことが大切です。

Q. 社員にハルシネーションへの注意を促すにはどうすればよいですか?

A. 実際に起きた誤りの事例を共有するのが効果的です。研修で、AIに架空の内容を答えさせる体験をしてもらうと、確認の大切さを実感しやすくなります。

Q. 画像生成AIにもハルシネーションはありますか?

A. 画像生成AIでも、指示と違う内容や、現実にはありえない細部(文字の崩れ、手指の形の不自然さなど)が生成されることがあります。文章の場合と同様に、用途に応じて内容を確認してから使うことが大切です。

Q. ハルシネーションが起きやすいAIと起きにくいAIを見分ける方法はありますか?

A. 自社の業務でよく使う質問と正解のセットを用意し、複数のAIに答えさせて比べるのが確実です。一般的な評判よりも、実際の業務に近い条件で試した結果を重視しましょう。

Q. ハルシネーション対策として、AIを使わないほうが安全ですか?

A. 一律に使わないことにすると、業務効率化の機会を失ううえ、個人が隠れて使うリスクも生まれます。ハルシネーションの性質を理解したうえで、アイデア出しや下書きなど影響の小さい用途から使い、重要な内容は確認する運用にするのが現実的です。

Q. AIの回答の「確からしさ」を数値で知ることはできますか?

A. 一部のサービスや開発用の機能では、出力の確率に関する情報を得られる場合がありますが、それがそのまま正しさを示すわけではありません。実務では、根拠の提示や評価用データでの検証と組み合わせて判断するのが一般的です。

まとめ:ハルシネーションは「なくす」より「見抜いて防ぐ」

ハルシネーションは、生成AIの仕組みに根ざした現象であり、完全に避けることはできない。だからこそ、その性質を理解し、使い方と仕組みで被害を防ぐことが大切だ。最後に要点を振り返る。

  • ハルシネーションは、AIが「もっともらしい続き」を作る仕組みから生まれる
  • 固有名詞・数字・日付・最新情報・専門分野で特に起きやすい
  • 「分からなければ分からないと答えて」「根拠を示して」「資料の範囲で答えて」と指示する
  • 出力は一次情報で確認し、用途に応じて確認のレベルを変える
  • 組織ではRAG、評価の仕組み、人の確認、社内ルールを組み合わせる

生成AIは、正しく付き合えば非常に心強い道具になる。まずは、自分がよく使うプロンプトに「分からない場合はそう答えて」と一文加えるところから始めてみてほしい。そして、AIの回答に数字や固有名詞が出てきたら、一度立ち止まって確認する。この小さな習慣の積み重ねが、ハルシネーションによる失敗を防ぎ、生成AIを安心して業務に生かすための土台になる。

※本記事の情報は2026年10月時点のものです。各AIサービスの機能や性能は変更される場合があります。業務で利用する際は、各提供元の公式情報と社内の規程をご確認ください。